家の作りやうは、夏をむねとすべし

古くからある木造住宅は日本の気候風土に適した工法と言われます。
「日本の気候風土に適した」とあると高温多湿な環境でも長持ちすると勘違いしてしまいがちですがそうではありません。(高温多湿に対する技術はもちろんあります)
日本は地震大国でもあります。
どれだけ高温多湿に強い住宅を作っても住宅の耐震性は別の問題です。※住宅の耐震性は地震の最大値がわからない以上、現在においても完成した技術とは言えません。

それでは何を以って「日本の気候風土に適した工法」と言われるのでしょうか。
古くからある柱などの構造材で構成される木造住宅(木造在来工法と呼ばれます)は部分改修がしやすいという特徴があります。
つまり高温多湿な環境で家が傷んでも、悪くなった部分だけの交換がしやすい工法なのです。

この悪くなったら交換するという考え方は住宅の維持・保全に繋がる大切な概念なのですが、残念ながら現在の日本では失われつつある考え方とも言えます。

日本は長らく新築偏重の住宅政策でした。
住宅性能も日進月歩で、家が傷んでしまった場合は直すよりも建て替えた方が合理的だという考え方が浸透してしまっています。
事実木造住宅の耐用年数は二十数年程度と言われています。
これでは日本の気候風土に適した工法とは言えませんよね。

平成生まれの方には馴染みがないかもしれませんが、かつて「お抱えの大工」という存在がありました。
今と比べると雨漏れも日常茶飯事だったので、家の修繕をお願いする大工さんとの付き合いがあったのです。
しかしバブル期には住宅の大量供給が求められ、また住宅建築の効率化も求められた背景もあり、お抱えの大工さんは次第に姿を消し、工務店・リフォーム会社など会社に所属する職人という位置づけになりました。
個人的なつながりから、会社との付き合いに変化したのです。

このお抱えの大工は悪くなったから直してほしいと呼ばれた際に、依頼された部分の修繕だけでなく、家全体を点検し、悪くなりそうな部分の修繕もついでに行うことを提案していました。
個人と個人のやり取りなので曖昧な部分も多く、昔のスタイルが良かったというつもりはありません。

ただお伝えしたいのは、家を定期的にメンテナンスするという概念が失われてしまったという事実です。

マイホームは定期的に手入れをしていけば日本の風土では長持ちする工法です。

お家も車と同じで定期的にメンテナンスをしていきたいものです。